童貞という無価値なオプションと、苦悩の理由がいつの間にかすり替わるという悲劇
ま た 非 モ テ 話 か と思われるかも知れないけれど、piroさんの記事を読んで無性に書きたくなったのでまたちょっと書いてみる。長いこと書くと書いてる本人自身わけがわからなくなるので短めに…と思ったけど案の定長くなった。
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童貞という状態が生物学的には敗北であり、恋愛市場においても価値が発生せず、また社会的にもコミュニケーション能力や関係維持能力の欠落をしめしかねないため、結果として童貞とは劣等感しか生まないものであるという話。
処女であることには価値が生じるけど童貞であることには価値が発生しないというところは考えるポイントとして面白いところだと思う。よくある（そしてジェンダーとかフェミニズム界隈の人には小一時間問いつめられるであろう）俗説に「処女は性交渉を経て初めて（成熟した存在としての）女になる」というのがあるけれど、それを踏まえると処女の価値には「無垢であること」以外に「一介の処女を女にできる権利」*1という意味が含まれてると思う。そして恋愛市場における処女は男性の想定する無垢性とかを考えると受動的でも全く構わない*2と思われる。
けれど童貞の場合、現代社会では「無垢な男」の需要は限りなく少ない。誠実であったり潔い必要はあるけれど、無垢であることは逆に頼りない印象を与えかねない。そして何より男性は恋愛市場においてはある程度の積極性を持った存在（＝いざというとき自分から動いたりする頼れる存在）でなければならない。つまり受動的であることが許されない。結果として童貞は非童貞の男性と価値は変わらず、また求められる行動も非童貞男性と同じ基準で見られてしまうのではないか。童貞の価値はマイナスではないが、プラスにもならない。ゆえに非童貞と同じ基準で見られてしまう（結果として経験の欠如によって価値がマイナスになる）傾向がある気がする。
そしてpiroさんの記事とは直接関係ないと思うけど、なぜ童貞であることや非モテであることが苦悩の原因になってしまうのかを自分なりに考えてみた。
童貞や非モテの苦悩は、もともと「恋愛至上主義の同調圧力」とか「童貞であることによる揶揄」といった社会的なものではないように思う。恐らくもっととシンプルな、「ヤリたい」という気持ちだと思う。
この「ヤリたい」（あるいはその前段階の「女と一緒にいてえ」）というのは単に「ティッシュの中でなく女とまぐわいながら射精してえ*3」という意味ではなく、恋愛や性交渉によって生み出される濃厚な関係性や感情、時間・空間にあこがれるという意味だ。自分一人が感じる幸せとはまた違う、自分以外の人と直接共有できる幸せを追求したいという気持ちと言い換えてもいいかもしれない。元々モテないことやヤったことがない苦悩というのは、そういった幸せの共有がしたいけどまだ出来てないことに対する苦悩なんじゃないかと思う。
しかしそれはいつの間にか社会的な苦悩にすり替わってしまう。はじめは内面的かつ個人的な苦悩だったはずなのに。なんでかははっきり分からないが、年齢が上がるにつれて恋愛と結婚とのつながりがより濃厚になる、つまり「恋愛の社会化」が起こるためかもしれない。
（追記）
piroさんからリアクションがあった（リンク先は上記と同じ記事）。
僕としては、「したいことができない」のは他の事についても同じであるものの、他のフラストレーションは乗り越えられてもこれだけは乗り越えられないというのは、結局の所、他者との比較つまり社会的つながりの中で浮かびあがってくる苦悩だからであると言うことができ、故に、社会的苦悩として認識されるのは自明であると考えている。
そういえばよく考えるとそうだ。たしかに「ヤりたい」という欲望な個人的なものだけれど、（二次元の世界に逃避しようと思わなければ）必ず相手が必要となる。相手がいるという時点でそれにまつわる思考や行動は社会的なものにになってしまう。となると苦悩ははじめから社会的な側面を含んでいるということだ。
というわけで、個人的な苦悩が社会的な苦悩に「すり替わる」というのはちょっと違うのだろう。あるいはすり替わってるように見えただけなのかも。でも、「恋に恋する」とか「乙女心」みたいに恋愛の社会的な側面を経験し自覚する前段階としての「シンプルで個人的な苦悩」もあるかもしれない。そしてこういう話をすると「白馬の王女様」を思い出す罠*4。
